契約期間と試用期間

 

試用期間として1年間の雇用契約を締結し、契約を更新しなかった。

 

※本事例は、判例等をもとに脚色して作成しています。法知識が正確に伝わるようできる限り努力していますが、実際の事件にはさまざまな要素が複雑に絡んできます。同様の判断が類似の案件に必ず下されるとは限りませんので、ご注意下さい。

 

事件の経緯

私Aは、
「事務管理のレベルアップと効率化のため事務員募集、定年60歳」等と記載された求人票を見て、B社の求人に応募しました。

採用選考はうまくいき、B社から内定をもらったのですが、面接の際に人事部長から、「A君の働き振りを見たい。3ヵ月だと短くて判断できないから1年様子を見させてくれないか」と言われました。

ずいぶん長い試用期間だなあとは思いましたけど、自分には事務系の仕事の経験があまりないので仕方がないかと思い了承し、平成14年4月1日付でB社に入社しました。

 

入社後に人事部長から「期間雇用契約書」なるものを提示されましたが、内容は次のようなものでした。

 

業務の種類:事務職

雇用期間 :平成14年4月1日から平成15年3月31日まで
      この期間満了後、採用されない時は、雇用契約は自動
      的に解除されたものとする

賃   金:本給○○円
      云々

そんなものかと思い、忙しさにかまけて、特に口もはさまずにサインしました。

 

慣れない給与計算事務など夢中でこなしているうちに、B社での日々はあわただしく過ぎていきました。

幸いそれなりのボーナスも支給され、B社の社員としての生活もようやく軌道に乗ってきたと思っていたのですが...

 

平成15年2月1日頃、人事部長より「A君とは雇用契約を更新しないので、平成15年3月31日付で自動的に退職になります。」と言われました。

その理由としては、

「期間雇用契約書を締結している」
「事務員は足りている」
「給料に見合うだけの仕事をしていない」

とのことだったのです。


そんな馬鹿な! 私は正社員として採用されたんじゃないのか?

訴えてやる! 私は辞めるつもりなんかないぞ!

 

 

【予備知識】

契約期間の定めとは

雇用契約には、期間の定めのある契約と期間の定めのある契約があり、一般的にいわゆる正社員は、期間の定めのない契約により雇用されます。

期間の定めのある契約は、期間が満了すればその契約は自動的に終了することになります。

 

試用期間とは

試用期間とは、その期間中に働き振りを観察する等して、社員として適格かどうかを判断する期間であり、一般的に「社員として不適格だと判断された場合には雇用契約を解約できる」という"特約"が留保された期間だとされています。

試用期間が満了となったところで「本採用しない」とした場合、継続する雇用契約をそこで打ち切ることになるので、"解雇"に当たります。

この場合、正社員を解雇する場合よりは広い囲の理由が認められますが、"試用"の目的に照らし合わせて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当だとみなされることが必要です。

 

 

さて、この訴えの結末は・・・

 

 

労働者側の勝ち:AさんがB社を辞める必要はない

 

【主旨】

「期間の定め」はあると判断される

求人票の記載内容や人事部長の面接からすると、当初Aさんが契約には期間の定めがないと誤解するのも無理はないが、B社から雇用期間を1年とする期間雇用契約書を提示され、Aさんはそれに対して特に異議を申し出なかったため、この契約には"期間の定め"があったものとされる。

 

当該期間は「試用期間」と解釈される

契約に期間を定めた場合、その目的が"労働者の適性を判断するため"であるなら、期間が満了したときに契約が終了するということで双方が合意していない限り、その期間は試用期間であると解釈される。

契約書中の「この期間満了後、採用されない時は、雇用契約は自動的に解除されたものとする」という文言も、継続して雇用される可能性が前提としていることが読み取れるし、まして人事部長の発言からすれば、この期間は適性を評価する期間と受け取るのが妥当であるため、やはりこの期間は試用期間である。

 

試用期間であれば、契約の終了に相応な理由が必要

試用期間中の社員であっても、職務内容も待遇も他の正社員と同様であれば、雇用契約を終了させるには"それ相応の理由"がなければならない(勤務成績が著しく不良など)。

B社の主張には、単に期間が満了したからという理由以外は見当たらず、契約を終了するということはできない。

 

(参考判例)

愛徳姉妹会(本採用拒否)事件

 

 

解説

正社員の場合、すなわち労働契約の多くは契約期間の定めのないものですが、近年企業が労働者の雇用に関して慎重になっているため、期間を定めた労働契約を締結するケースが増えています。

契約期間を定める場合には、3年を超える期間について締結してはならないことになっています。(専門知識を有する者や60歳以上の高齢者については5年が限度)

そして、期間雇用契約の場合には、期間満了時に使用者が異議を述べないと黙示の更新となり、以後は期間の定めのない契約と解釈され、また更新を重ねて相手方に更新期待状況が生ずるときも期間の定めのない契約と類似のものと解釈されますので、このような場合には、期間雇用契約といえども、期間満了時に使用者側から契約を終了する行為は「解雇」と類似した取り扱いになります。

期間雇用契約を締結するとき、契約を更新するとき、そして契約を終了するときには、上記のような法律知識を踏まえた対応が必要になります。