整理解雇

 

業績悪化のため、パート社員を整理解雇した。

 

※本事例は、判例等をもとに脚色して作成しています。法知識が正確に伝わるようできる限り努力していますが、実際の事件にはさまざまな要素が複雑に絡んできます。同様の判断が類似の案件に必ず下されるとは限りませんので、ご注意下さい。

 

事件の経緯

 X社は電気機械器具・装置及びシステムの製造・販売を行っている会社です。AさんはそのX社にパートタイマーとして入社し、八幡工場に勤務しました。契約期間を3ヶ月とし、昭和59年9月4日に入社して以来、その契約をずっと更新し続けています。

 

契約更新手続きは、「労働契約」と書かれた書面に日付、名前を記入押印して提出することになっています。そして今回も今まで同様、平成13年6月21日から平成13年9月20日までの更新手続きをしました。

 

ところが平成13年6月25日に、X社はAさんに対して、同年7月25日をもって他の同僚とともに解雇する旨の意思表示をしました。

 

Aさんは納得がいかず、業界のZ労働組合に加入し、Z労働組合X社パート労働者支部を結成し、X社に組合加入通知書、及び解雇の撤回と団体交渉を求める要求書を提出しました。

 

その後7月11日に第1回の団体交渉が開催され、7月16日にX社の組合に対する説明会が結成され、7月17日に第2回目の、7月25日に第3回目の団体交渉が開催されました。

 

X社の平成13年3月度の業績は、受注高も売上高も増加し、経常利益は60億円、当期利益は10億円を計上しています。

 

Aさんは、解雇の無効を訴えることにしました。

 

それに対して、X社は以下のとおり、整理解雇の要件を充足していると主張しています。

 

人員削減の必要性

 世界的半導体不況により、八幡工場も平成13年6月度の受注高は平成12年10月度に比べて半減してしまい、回復の兆しは全く見えません。 受注と生産にはタイムラグがあるので、平成13年4月度の受注状況からすると、330名のパートタイマーのうち100名程度が人員過剰となることがわかりました。 この後平成13年3月21日から平成13年9月20日までの経常利益は23億円の赤字になる見込みと発表しています。

 

解雇回避努力義務

 経営状況を踏まえ、平成13年4月度から、予算計上していた設備投資の凍結、間接費用の大幅な削減、協力工場・請負等外製の内製化等委託費削減、設備関係費削減等を実施し、八幡工場においては、他工場へ社員やパートタイマーを派遣したり、パートタイマーの就業時間を1時間短縮したりしてきましたが、平成13年6月22日に開催された全社経営会議において、全社年度決算見込みが赤字になることが確実となり、最後の手段としてパートタイマー31名の解雇を実施しました。

 

解雇される者の選定の妥当性

解雇される者を選定した理由は、出勤率に勤務態度や協調性を加味しました。出勤率の悪い社員のなかで、Aさんはさらに、「作業中のスピードが遅い」「作業中の私語が多い」「個人の悪口を言い、和を乱す」「同僚でAさんにいじめられて退職した人がいる」「上司に対する不満を皆に言う」「忙しいときでも他にアルバイトをしていることを理由に残業に協力しない」「作業中職場をよく離れる」等の問題点を抱えていることを考慮しました。

 

 手続の妥当性Aさんには1ヶ月前に解雇予告をするとともに、生産量が減って厳しい状況になっていることが解雇の理由であること、及び個別的な理由は総合的判断であることを説明しました。また労働組合には誠意をもって協議をおこなってきました。

 

 

さて、この訴えの結末は...

 

(一応)労働者側の勝ち:整理解雇の要件を全ては満たしていない

 

【主 旨】

期間中の契約解除はできない

 期間の定めのある労働契約の場合は、民法628条により原則として解除できず、期間内解除はやむを得ない事情がなければならない。

 

確かにX社の業績は急激に悪化しており、景気回復の兆しもなかったので、人員削減の必要性があったことは認められる。

 

しかしながら、今回解雇されたパートタイマーは合計31名であり、残りの契約期間は約2ヶ月、パートタイマーの平均給与が12万円から14万円程度であったことや、X社の企業規模からすると、どんなに業績悪化が急激であっても、契約期間の終了を待つことができないほどの事態が発生したとは言えない。

 

そのため、期間3ヶ月の労働契約を更新したことについての責任は負わなければならない。

 

では、契約期間満了に伴い、契約は終了するのだろうか。

 

整理解雇の4要件のうち、3要件は満たされている

 契約期間の定めのある労働契約であっても、Aさんのように多数回契約を更新しているのであれば、解雇に関する法規制が類推適用される。

 

そのため、解雇の理由が合理的であって、社会通念上相当なものとして是認できるかどうかについて検討する必要がある。

 

この場合整理解雇にあたるので、いわゆる整理解雇の4要件を満たしているかどうかが問題となる。X社の主張を見ると、人員削減の必要性、解雇回避努力、手続の妥当性の3要件は満たしていると判断できる。

 

被解雇者選定の妥当性が不十分

 残りの要件、「被解雇者選定の妥当性」について検討すると、まずAさんの出勤率だが、90.40%であり、職場内での順位もそうは高くない。

 

となると、Aさんの勤務態度や協調性が問題になってくるのだが、これについては会社側からの主張に具体性がなく、これを訴明するのに足りる客観的な資料や他の候補者との比較資料の提出もない。

 

したがって、Aさんの社員としての地位保全の権利が、一応認められるというべきである。

 

(参考判例)

安川電機八幡工場(パート解雇)事件

 

解説

 仮にX社の言い分が本当で、Aさんに問題行動があったのであれば、きちんと懲戒処分をとって、始末書等証拠を残しておけば結果は異なっていたかもしれませんね。